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モビルスーツについてその2



『機動戦士ガンダム』(宇宙世紀)シリーズにおけるモビルスーツ
『機動戦士ガンダム』をはじめとする作品群の舞台となる「宇宙世紀」におけるモビルスーツ(Mobile Suit)は、"Mobile Space Utility Instrument Tactical" の略とされ、「戦術汎用宇宙機器」の意味である。
ただ、これは後にサンライズでSF考証を手がけることになる森田繁が、1980年代初めの同人誌「ガンサイト」やムック「ガンダムセンチュリー」で作った略語で、また裏設定の創作を手がけるプロダクション「伸童舎」のメンバーらによる、1990年代以降の関連書籍にも記載されている。それ以前には、単に“機動服”という意味を意図した乱暴な和製英語として存在していた。また、劇場版第2作『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』のパンフレットに掲載された大河原邦男のイラストには、「宇宙白兵戦用重機動宇宙服」という言葉が意訳語として掲載されていた。
 
黎明期
地球連邦政府に対する全面戦争を想定していたジオン公国が、質、量ともに強大な力を持つ地球連邦軍に対し優位に立つための新しい兵器として、宇宙世紀0071年にサイド3の民間企業ジオニック社とツイマッド社とMIP社に宇宙用機動兵器の開発を委託。両社の提出した試作機はどちらも「腕」を備え「能動的質量移動による自動姿勢制御(AMBAC)」が可能であったが、加えて「脚」を備え完全な人型であったジオニック社の機体の方が選ばれ、宇宙世紀0073年、MS-01という型式番号とモビルスーツという名称を与えられた。宇宙世紀0075年、実戦型モビルスーツの採用トライアルにおいて、ジオニック社はYMS-05、ツイマッド社はEMS-04(ヅダ)を提出。EMS-04は宇宙空間での高い機動力を発揮しながらも試験中に爆発事故をおこし、結局安定した性能を示したYMS-05が採用され、「MS-05 ザク」(後にザクI)と命名された。また、地球侵攻作戦のための局地戦用MS開発も宇宙世紀0076年に開発が始められた。
そして、ザクIとその改良型であるザクIIの大量生産が行われ(この頃からザクIは旧ザクと呼ばれるようになる)、宇宙世紀0079年の一年戦争の緒戦に投入された。戦艦対戦艦の超長距離砲撃戦や突撃挺・戦闘機による一撃離脱戦法という、従来の艦隊決戦のみを想定していた地球連邦軍の意表をつく形で、目視での遠近感が掴みにくい宇宙空間で、しかも高い機動性を発揮するモビルスーツが接近し、敵艦に直接攻撃を加え撃破するという戦闘を行い、有効な迎撃手段を持たない地球連邦軍に対して圧倒的優位に立つこととなった。
この他、モビルスーツの開発以前にジオン公国で発見されていたミノフスキー粒子(レーダーやセンサー類を使用不能にするなど様々な働きをする)を戦闘空域で散布する事により、高性能レーダーに頼っていた地球連邦軍戦艦の索敵手段を封じる事に成功したのも大きな勝因であった。また、後に地球上においても水陸両用MSが連邦軍の艦艇に多大な被害を与えている。
そして、ジオン軍に決定的な差を付けられ、大打撃を受けた地球連邦軍も「V作戦」(正しくは「V計画」)を立案し極秘にモビルスーツを開発。当初完成したのはガンダム、ガンキャノン、ガンタンクという3種類のモビルスーツであった。連邦軍は、これらの中で特に能力が突出して高かったガンダムの簡易量産型であるジムを大量に生産し、実戦投入した。これにより地球連邦軍は一年戦争に勝利する事ができた。
それ以降、モビルスーツという新たな兵器体系は戦車や航空機等といった既存の兵器のほとんどに取って代わる存在となり、また、多種多様なモビルスーツが製作されていく事となる。
なお『ガンダム』世界はエネルギーを木星産のヘリウム3による核融合発電に依存している。モビルスーツの動力源にはミノフスキー物理学により大幅な小型化を実現したミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉が使用されており、冷却問題を除けば稼働時間限界はないと言ってよい(ただし、具体的に核融合をどう用いて発電を行うかについて、作品中で語られたことはない)。
また、高性能だが汎用性・生産性に乏しく後にモビルアーマーへと怪物的進化を遂げたジオン側モビルスーツと、汎用性と生産性を重視して数で圧倒した連邦側モビルスーツが、それぞれ第二次世界大戦におけるドイツとアメリカの戦車開発・運用状況を反映していると言われている。
 
激動期
宇宙世紀0080年代後半は、MS開発における激動期である。ムーバブルフレーム構造を採用した第2世代から、変形機構を備えた第3世代、さらにニュータイプ(NT)対応機能を備えた第4世代といった、MS数世代分の進化がこの時期に集中している。地球連邦軍内部におけるエゥーゴとティターンズの主導権争い、アクシズの帰還など、地球圏は一年戦争時に匹敵する混沌とした状況下にあった。また、当時は一年戦争以降積極的に進められていた公国系と連邦系の技術融合の成果が結実した時期でもあり、それらの相乗効果と相まってMSの単機あたりの性能は爆発的に向上していった。
機能向上に伴う付加機能の方が脚光を浴び、その性能を更に向上させるべく、本来のMSにとって必要とされない装備が追加されていくようになる。こうしてMSは徐々に巨大化を余儀なくされる。MSの平均全長は一年戦争期の機体の18m前後を超え、1割増し以上の20m強となる。
巨大化に伴い、さらに多様な機能が要求される。変形機能は勿論のこと、戦艦クラスに匹敵、或いは優るような火力、惑星間に及ぶ航続距離、大気圏内航行能力、そしてサイコミュの搭載など、MSに対する要求はまさしく万能兵器を志向するものであった。万能的な機能を搭載するため、巨大化は増進される。実験機の中には30mは優に超え、40mに達する機体まで出現し始めた。この時点でMSは進化の袋小路に入り込み、いわゆる恐竜的進化を遂げつつあった。
 
モビルスーツの世代別分類
モビルスーツが登場して以降、その時代背景や技術水準によって様々なタイプのモビルスーツが開発されている。モビルスーツは次の様に大別される。
 
第1世代モビルスーツ
主に『機動戦士ガンダム』とその外伝群、および『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する世代。
ジオン公国軍が開発したザクIを始めとし、モノコック構造あるいはセミ・モノコック構造を基本としている。一年戦争終結までに開発されたモビルスーツのほぼ全てと、デラーズ紛争期のモビルスーツがこれに含まれる。以後のモビルスーツの基礎を築いた。
モビルスーツという兵器が登場したばかりのため、様々なタイプのものが製作され運用された。運用されるものの中には後方支援タイプのキャノン搭載タイプや、水中で行動可能なものなどもみられた。しかし、世代が進みモビルスーツの性能が上がるにしたがい、こういった専用のタイプというものは製作されなくなる傾向があり、多岐にわたったMSの進化の道は次第に絞られて洗練されていった。
 
第2世代モビルスーツ
主に『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場する世代。
第2世代モビルスーツの条件として全天周囲モニター・リニアシート・イジェクションポッドの採用、ムーバブルフレームの導入、装甲材としてガンダリウムγを使用していることの3つを満たしていることが挙げられる。また、ジェネレーターの小型軽量化と高出力化によりビーム兵器の携行が一般的となった。装甲もビームの直撃を避けるため運動性重視のものとなり、それを対ビームコーティング仕様のシールドで補っている。更にAMBAC機能強化のために四肢とは別にテールスタビレーターやフレキシブルバインダーなどの可動肢を設けた機体も多い。一年戦争終結後に開発され、グリプス戦役から第二次ネオ・ジオン抗争に掛けてのほとんどの量産機がこれにあたる。
 
第3世代モビルスーツ
第2世代モビルスーツに可変機構を加えた可変モビルスーツがこれにあたる。グリプス戦役から第一次ネオ・ジオン抗争に掛けて多くの試作機が投入され、機動性や行動範囲を高めたり状況によって可変して戦闘することが出来た。しかしその反面、生産コストの高騰や機体構造が複雑になったことによる整備性の低下などにより主力機とはなりえなかった。
 
第4世代モビルスーツ
第一次ネオ・ジオン抗争時に台頭した、大火力を備えるニュータイプパイロット対応モビルスーツの総称。基本的な条件としてはモビルアーマークラスの高出力ジェネレータの搭載、並びにジェネレータ直結式の高出力メガ粒子砲を固定武装として有すること、さらに、サイコミュの安全性が高く、高度なニュータイプ能力を持たないパイロットにも操縦可能な点が挙げられる(インコムやバイオセンサーといった簡易サイコミュもこの範疇に含まれる)。また、多機能化を追求した結果、総じて大型化する傾向にあり、頭頂高20mを超える機体が多い。変形機構の有無は条件には含まれず、スラスター・デバイスの推力自体は然程向上していない。しかし、ジェネレータの出力そのものが大きいため、モビルスーツとしての機動力は旧世代機を上回る例も少なくない。また、MSZ-010 ΖΖガンダムのような第3・第4世代双方の機能を有する機体も極一部には存在するが、この様な超々高級機は例外とされている。
第4世代モビルスーツは、その攻撃能力面において極めて高い性能(雑誌『ガンダム・ファクトファイル』を始め、ガンダム関連の書籍では「恐竜的進化を遂げた」と形容される事が多い)を発揮したものの、兵器としては末端肥大化した感も否めず、また、コストや運用性の問題から大量生産には向かず、一部のエース・パイロット向けに少数が配備されるに留まっている。また、モビルスーツの技術的限界が見え始めた時期でもあり、第二次ネオ・ジオン抗争以降は再びシンプルな機体コンセプトへと回帰していく事となる。ただし、攻撃力の側面としてはオプション装備として受け継がれていく。
 
第5世代モビルスーツ
ミノフスキークラフトを搭載したモビルスーツを第5世代モビルスーツと呼ぶ。すぐに第2期モビルスーツの時代に移行してしまったため、ここに分類されるものはペーネロペー、Ξガンダム、ゾーリン・ソールのみである。なお、後述の第2期モビルスーツを第5世代モビルスーツに分類する資料もある。
 
第2期モビルスーツ
主に『機動戦士ガンダムF91』『機動戦士Vガンダム』に登場する世代。
宇宙世紀0110年代、これまで大型・高機能・複雑化、それに伴うコスト高という進化を続けていたモビルスーツを、原点に立ち返って見直す風潮が生まれる。そしてこれまでモビルスーツ開発の主導権を握っていたアナハイム・エレクトロニクス社に対抗して、サナリィがF90という小型モビルスーツを製作し、アナハイムが製作したモビルスーツ(MSA-0120)とのコンペティションにて、F90が次期主力モビルスーツに決定される。これ以前のモビルスーツは第1期モビルスーツと分類され、以降は第2期モビルスーツと分類される。全高は第4世代モビルスーツでは最大20mを超えていたのに対し、15m程度にまで小型化される。ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の高出力化、小型化が進み、ビームシールドの装備と単独での長時間飛行が標準的となる。また、このサイズでのIフィールド防御や大容量の携行武器も実装されている。ただし新型熱核反応炉は高出力、小型化された反面、核爆発を起こす可能性がある。 ただし150年代の連邦軍主力として作られたジェイブスは当時の平均的なMSよりも一回り大きく、さらにザンスカール帝国のMSにもアビゴルやザンネックなどの18~20m級の機体が存在する。
 
有人機動兵器のその後 ?モビルスーツからマン・マシーンへ?
その後宇宙世紀0120年代から少なくとも0150年代まで、第2期モビルスーツが主力となる。
そのさらに先の時代である宇宙世紀0200年代を書いた小説『ガイア・ギア』では、ミノフスキードライブの普及により全ての機体が大気圏内を単独で自在に飛行可能になり、標準のビームライフルがグリプス戦役におけるハイメガランチャー並の威力になり、Iフィールドバリアがビーム・実体弾を問わず防御可能になり、サイコミュ関連の技術が常人でも簡単に使用可能になるなど、無数の技術革新によってモビルスーツの運用方法・存在意義に大きな変化が訪れた。
これにより、運用条件が限定的であった「モビルスーツ」と言う名称に替わって、これらの人型機動兵器はマン・マシーン(MM)と呼ばれるようになった。マン・マシーンは、周辺機器のバリエーションが豊富である為と、技術の発展で18m級の大型機でも15m級の小型機と同水準の機動性を発揮可能になったために、再び第二次ネオ・ジオン抗争までの主流であった20?24m程度のサイズへと戻った。
『Gセイバー』では再びモビルスーツと呼ばれる兵器が現れるが、マン・マシーンと同じく全高は18~20m程度である。
 
モビルスーツの階層構造
過剰性能とも言えるほどに高い性能を持たせた試作機・RX-78-2ガンダムは諸事情により実戦投入され、パイロットの技量もあって目を見張るほどの活躍を見せ、さらにこの戦果を元に量産機ジムが開発された。このことは後のモビルスーツ開発に重要な示唆を与えた。すなわち、エース級のパイロットに高性能な試作機を与え実戦投入し、その運用データを一般兵向けに簡略化した量産機開発に役立てるというものである。こうして高性能試作機と量産機という階層構造(ヒエラルキー)が出現した。
グリプス戦役期から第二次ネオ・ジオン抗争期にかけて(すなわち第2世代から第4世代にかけて)、階層構造に基づく機体性能の差別化が積極的に図られている。特に高性能な試作機はフラグシップ機として各陣営や製作元の象徴として扱われたことから、その開発に費用や新技術の投入を惜しまない傾向が見られ、結果としてモビルスーツの恐竜的進化を促すこととなった。
他の世界観の作品においても階層構造によるモビルスーツ間の極端な格差が見られることがある。
 
モビルスーツの系統別分類
モビルスーツをその開発者や技術の系統、およびそれからくる外観の差で分けることもある。ガンダムほかを原点とするいわゆる「連邦系」と、ザクIを原点とする「公国系(ジオン系)」の二種類に大まかに分類することがある。
連邦系モビルスーツはおおむね以下のような特徴を持つ:
直線的なシルエット
“人間の両目”風デュアルセンサー、もしくはゴーグル型のセンサーユニット
胸部に左右一対のスラスター兼用排気口
スマートな脚部
これに対し、公国系モビルスーツは:
曲線的なシルエット
モノアイ(単眼)タイプのセンサーユニット
大振りのスカート型腰部アーマー
太めの(特に脛のあたりが大きく広がった)脚部
一年戦争期には連邦系・ジオン系双方には一目でそれとわかる差異があったが、同戦争後には双方の技術者が事実上アナハイム・エレクトロニクス社に一本化されたことから、双方の特徴が混じり合ったモビルスーツも登場している。


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[ 2012/05/13 10:57 ] 兵器・技術 | TB(0) | CM(0)

モビルスーツについてその1


モビルスーツ
モビルスーツ (MOBILE SUIT: MS) は、アニメ『機動戦士ガンダム』をはじめとする「ガンダムシリーズ」に登場する、架空の兵器の分類の一つ。一種のロボットで、ほとんどの場合人型をした有人機動兵器の事を指す。英題では「機動戦士」にあたる部分にこの語が使用される。
 
概要
劇中の大道具・小道具としてのモビルスーツ
1979年制作の『機動戦士ガンダム』において初登場したモビルスーツは、1972年の『マジンガーZ』以来のロボットアニメに登場するロボット達とは大きく異なる描かれ方をしていた。それまでのロボットアニメに登場するロボットは、いわば特撮番組などにおけるヒーローと怪獣を、ロボットと敵役ロボットとに置き換えたものであった。これに対して、『ガンダム』はモビルスーツを現実の世界の戦闘機や戦車と同じような兵器の一種として描いたのである。
例えば、『機動戦士ガンダム』で最も数多く登場したモビルスーツ・ザクは、それまでのロボットアニメの敵巨大ロボと根本的に異なり「同型機が何度も、かつ同時に複数登場する」という点で画期的であった(『新造人間キャシャーン』のアンドロ軍団のように、量産型の登場例は全高2メートル程度ながらも既にあった)。それまでの敵ロボットは毎回毎回外見も行動も異なるものが一機ずつ登場していたのに対し、『機動戦士ガンダム』第1話から第11話までの間、敵側のモビルスーツはいわゆるザク、旧ザク、そしてシャア専用ザクだけで通したのである。その後も、現実の歩兵や戦車・戦闘機などが複数編成で運用されるのと同様に、ザクは同じ機体が同時に複数登場するのが常とされた。またザクの武装はマシンガン・バズーカといった実在の歩兵用火器をモビルスーツの大きさにしたものであり、怪獣のような火炎や怪光線で攻撃してきた従来の敵ロボットとはこの点でも一線を画していた。外観も、商品化が予定されていなかった事もあって、大戦中のドイツ軍兵士をイメージさせる兵器らしさを強調したデザイン、戦車などの軍用車両を思わせる緑系のカラーリングとなっていた。、ちなみにこの事により、高年齢層の視聴者には主役機のガンダム以上の人気を博す事になる。
ザクに比べて、主人公アムロ・レイが搭乗する主役機ガンダムは、ザクと比べて性能は多少は良いが桁外れに強かったわけではない。ビームライフルや頑丈な装甲といったアドバンテージはあったものの、敵のパイロットの腕前や戦術により、しばしば苦戦を強いられている。また、敵側にもグフやドムといった新型モビルスーツが登場するにつれ、機体性能の差も縮まっていった。
こうした「巨大ロボットを現実の兵器と同じに扱う」という、従来のロボットアニメと一線を画したコンセプトは、多くの追随作を生み、一大ジャンルに発展していった。
こうした路線はその後の多くのロボットアニメで洗練され、主役メカが存在せず敵味方が同じ工業製品の量産機で戦うという内容の『装甲騎兵ボトムズ』でピークに達する(『リアルロボット』という呼び名を作ったのは『ボトムズ』の監督の高橋良輔であるとされる)。
当初は宇宙を舞台にしたリアルな物語を作ろうとしていた『機動戦士ガンダム』の企画時に、本来は登場させるつもりはなかった巨大ロボットをスポンサーの意向により登場させざるを得なくなった際、スタジオぬえの高千穂遙が、ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』の一読を企画部長の山浦栄二に薦めた。「リアルな人型の兵器が存在してもおかしくない」と感じた総監督の富野喜幸(現・富野由悠季)をはじめとした制作スタッフは、当初はその「パワードスーツ」のアイディアを元に全高2m程度の強化装甲服を物語に使うつもりであったが(「モビルスーツ」という名称はその名残である)、スポンサーからどうしても巨大ロボットを出さなくては駄目だと要求されたため、戦闘機と同サイズである身長18mのロボット、つまりマジンガーZと同じ大きさのロボットを出すこととなった。当然、現実的な兵器論としてはこの様に巨大なものは役には立たないことは分かっていたが、当時のアニメロボットの主流は50m~100m程度であったためこれでも十分にリアルな描写ができると判断され、しぶしぶ企画に登場させることにした。だが実際に企画を進めてみるとリアリティのある巨大ロボットは非常におもしろい演出ができることがわかり、結果的に『ガンダム』は『マジンガーZ』とも『宇宙の戦士』とも違った新天地を切り開くことになる。モビルスーツという兵器の概念は、こうして生み出されることになった。 当初は、物語の最後まで敵側のモビルスーツはザクのみで通す予定であった。しかし視聴率低下によるテコ入れから複数の目新しい敵キャラクターとして新型機を登場させざるを得なくなり、さらには非人間型の怪獣的なモビルアーマーまで顔を出すことになった。これらの登場はリアルな世界観を破壊してしまうのではないかと最初は懸念されたものの、現実の戦争でも戦況の変化と共に新型兵器が次々と戦線に投入されることは全くおかしな事ではなく、あくまでリアリティをそこなわない程度に抑えられて物語にうまく華を添えることになり、ビジネス的にもバラエティに溢れたキャラクタービジネスの大成功へとつながることになった。
初代ガンダムはロボットアニメというジャンルに、『宇宙戦艦ヤマト』で見られたような戦場を舞台とした人間ドラマの要素を取り込んだ初の作品であるといわれる。戦場で相対する人々の人間模様、特に成長途上の少年少女達が多く登場し彼らの成長が作品の柱になっており、また物語後半に登場する重要なテーマ「人類の革新『ニュータイプ』」という存在の意味や意義を描くことに主眼をおいており、モビルスーツの華々しい活躍は作品を彩っているものの、それら重厚な物語に水を差すようなことはない。
なお「モビルスーツ」以降、ロボットアニメでは登場する巨大ロボット兵器を単に「ロボット」と呼ばず、「重機動メカ」「ウォーカーマシン」「オーラバトラー」など、各作品が世界観に沿った固有の総称を設定する事が慣例となっている。富野によれば、現場でもロボットではなくモビルスーツと呼ぶ事を徹底したという。
 
キャラクターとしてのモビルスーツ
モビルスーツはキャラクターの一種としても非常に成功した部類である。『機動戦士ガンダム』の本放送は、そのリアリティを重視した物語が従来のロボットアニメとあまりに異質であったこともあって当初は視聴率が今ひとつ振るわず、またメインスポンサーであったクローバーが発売していた玩具の売り上げが不振であったために終盤近くで打ち切りとなってしまった。その後1980年にバンダイからガンダムをはじめとしたモビルスーツのプラモデルが発売され、価格の手ごろさなどから当時の子供達に絶大な人気を博した。やがて「ガンプラ」と呼ばれるようになったこれらのプラモデルの人気と、ドラマ性を重視した物語の評価とが相まって『機動戦士ガンダム』の再放送の視聴率は非常に高いものとなり、そして劇場版映画として再編・上映され大ヒットとなった。ガンプラは子供向けの簡便な低価格キットから高年齢層向けに凝った作りの高価格キットまで幅広く展開されている。四半世紀を経た現在でも続編作品の登場機体に加え、いまだに初代ガンダムやザクの新型キットが発売されるなどその人気は全く衰えていない。
ガンプラ以外にもフィギュアなどが発売され、またモビルスーツが登場するコンピューターゲームも、その操縦を楽しむアクションゲームやこれによる戦略を楽しむシミュレーションゲーム等多数が制作されている。子供向けやファン向け以外でも、一般の大人向けの商品のキャラクターとしてもモビルスーツは人気がある。
またモビルスーツを2~3頭身程度にデフォルメした『SDガンダム』シリーズも高い人気を持つ。これらは本来のモビルスーツをコミカルに表現したもので、体型以外の設定はそのままにコンピュータゲームに登場したり、あるいは本来のガンダムシリーズを離れて全く新しいキャラクター・世界観を構築したものもある。
 
モビルスーツのデザイナー
『機動戦士ガンダム』においてモビルスーツをデザインしたのはメカデザイナーの草分けである大河原邦男である。実際の現場では監督の富野由悠季やキャラクターデザイナーで作画監督の安彦良和によってもデザインの提案や修正がおこなわれている(初期デザインのガンダムには鼻と口があったのだが、安彦が異議を唱え、現在のようにマスクを付けているかのようなデザインとなった。また、青をベースとしたカラーリングだったのを、白をベースとするよう提案したのも安彦である)。さらに、番組中期以降の登場メカの大半は富野によってラフデザインがおこされ、それに比較的忠実な大河原によるフィニッシュワークが行われているため、基本デザインは富野によるものと言っても過言ではない(『伝説巨神イデオン』でも同様のことが行われた)。ガンダムブーム・ガンプラブームによって「メカニックデザイナー(メカニカルデザイナー)」という職種が注目されるようになった。
以降のガンダムシリーズにおいても、永野護や出渕裕、カトキハジメなどといった多くのメカデザイナーが参加している。アメリカのインダストリアルデザイナーのシド・ミードも『∀ガンダム』に参加したことがある。漫画家の鳥山明も自作品内でオリジナルのモビルスーツをデザインし登場させた。
 
モビルスーツの設定付け
『機動戦士ガンダム』がアニメファンの人気を獲得する中で、その世界観に関する考察や様々な後付け設定の創作が行われている。例えば制作スタッフとラポート社発行のアニメ雑誌「アニメック」編集部との交流により、モビルスーツには実在の兵器に似せた型式番号が割り当てられるようになった。例えばガンダムには「RX-78」、ザクには「MS-06」といった具合である。モビルスーツの型式番号や名称は、スタジオぬえが係わった、みのり書房発行の雑誌「月刊OUT」別冊『GUNDAM CENTURY』により、「RX-78-2 ガンダム(2号機)」「MS-06F ザクII F型」と、また旧ザクやシャア専用ザクも「MS-05 ザクI」「MS-06S 指揮官用ザクII」とより詳細に設定された。さらに最初の劇場版公開当時、講談社のムックで劇中には登場しなかったバリエーション機が創作され、これは後にGUNDAM CENTURYで生まれた設定を加えて拡大し、バンダイの『モビルスーツバリエーション』 (MSV) として商品展開、ガンプラなどで人気を博した。これらはアニメの制作スタッフによるものではなかったが、ずっと後に作られた作品の劇中に登場することで、公式的な設定となっていった。
また、当初モビルスーツによる白兵戦を必然のものとするために、レーダー等を使用不能にする粒子として創作されたミノフスキー粒子についても、『GUNDAM CENTURY』などにより設定が拡大し、劇中の様々な兵器などの設定付けがおこなわれた。例えばビームライフルなどを実現するメガ粒子、いわゆるバリアを実現するためのIフィールドジェネレーター、空中に大型の機器を浮かべるためのミノフスキークラフトなどである。これらは後にミノフスキー物理学という架空の科学体系としてまとめられている。モビルスーツが人型をしている理由についても、手足を動かす際の反作用で機体の向きを制御するAMBACという概念が創作されている。
こういった詳細な設定はそれ自体でファンを楽しませるものとなると同時に、後に作られたロボットアニメにも詳細な設定付け、特に「人型有人兵器の名称とその存在理由」を考証する必要性を生み出した。
この点については、監督である富野自身が、かつては「大型の人型汎用ロボットは、その人型ゆえに人間と同等の汎用性と実用性がある」という素朴な解釈を披露することが多かったが、最近のガンダムエース誌での対談においては「背景は人間の戦闘である、という事を表す記号として、あえて人型にこだわっているだけ」という主旨の発言が多い。かつて作中の人物にも「あんなの(足)飾りです」と言わせていた。
 
後の作品などへの影響
『機動戦士ガンダム』におけるモビルスーツの描写は、『超時空要塞マクロス』『装甲騎兵ボトムズ』『銀河漂流バイファム』『ファイブスター物語』『新世紀エヴァンゲリオン』など、後進のロボットアニメに多大な影響を与えている。これらの作品では、『機動戦士ガンダム』同様にあくまでロボットをドラマの大道具の一種として描いている。後に古今のロボットアニメのロボット達が一堂に会するシミュレーションゲーム『スーパーロボット大戦シリーズ』において、これらのロボットに対して「リアルロボット」という分類名が与えられた。一方で『マジンガーZ』以来のロボットをヒーローと同等の存在として描くものを「スーパーロボット」と称し、リアルロボットとスーパーロボットはお互いに影響を与えつつ今日に至っている。
『鉄腕アトム』が等身大の人間と共に活動するロボットに対するあこがれを、『鉄人28号』が大型ロボットに対するあこがれをかき立て、共に日本のロボット技術者にとって究極の目標となったように、モビルスーツも『マジンガーZ』と共に有人型ロボットへのあこがれをかき立て、ロボット開発の目標のひとつとなった。2005年に「LAND WALKER」という有人型二足歩行ロボットが公開された際には、「遂にモビルスーツ出現か」とまで騒がれるほどであった。このように「モビルスーツ」という言葉は、『機動戦士ガンダム』の知名度の高さもあり、人が乗って操縦桿で操縦する人型ロボット全体を示す代名詞にすらなっている。
 
劇中におけるモビルスーツの概要
モビルスーツは平均的に人間の約10倍の大きさ(身長180cmならば18m、6階建てのビル相当。ただし作品によって大きさはまちまちである)をした人間型有人機動兵器で、胴体や頭部に設けられた操縦席に直接人間が乗り込み操縦をする。地球上や宇宙空間で主に活動するが、海洋や砂漠等の局地ではそれ専用に製作もしくは改修されたモビルスーツであれば行動できる。また、以上に挙げたどの環境でも行動可能なモビルスーツも存在する。
その行動はほとんどの場合、敵対勢力との戦闘を目的としており、ビームライフルを始め複数の武器を携帯するのが常である。また、モビルスーツそれ自体が移動するための燃料類(推進剤等)の搭載量が限られているため、稼動のためには補給や修理、整備を行える施設及びモビルスーツ単体の輸送も可能な宇宙戦艦等の、バックアップ体制が欠かせない(例外として∀ガンダムは自己修復機能を持ち単機での運用が可能であるが、本来は戦術システムの一部としての運用を前提にしていたとみられる)。
また、モビルスーツはその外形を人型を拡大したものにすることで、人間に似た多用途性や汎用性を獲得したが、逆に人型にとらわれない外形で、モビルスーツには無い高加速能力や火力の増加などを取得している「モビルアーマー」という種類も存在する。
なお、モビルスーツとの区別のため、人間が直接着用する従来のパイロットスーツや宇宙服は「ノーマルスーツ」と呼称されている。
ガンダムシリーズは以下に述べるように複数の世界観で展開され、モビルスーツの設定は各々の世界観で多少異なっている。
 
各作品シリーズにおけるモビルスーツ
以下の設定には、アニメ作品中で表現されたものの他、先に述べたような雑誌上の企画で創作されたものや漫画・小説などの派生作品で創作されたものも含まれている。そうして作られた設定は後にサンライズの監修を受けて設定集などの形にまとめられたものが多いが、中には他の作品と矛盾を起こすものや後に顧みられなくなったもの、サンライズによって後に取り消されたものもある。
 





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[ 2012/04/27 22:00 ] 兵器・技術 | TB(0) | CM(0)
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