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∀ガンダム 作品紹介




『∀ガンダム』(ターンエーガンダム、Turn A Gundam)は、サンライズ製作のテレビアニメ。「ガンダムシリーズ」の一作。1999年(平成11年)4月9日から2000年(平成12年)4月14日までフジテレビ系列(一部を除く)で全50話が放送された。略称は「∀(ターンエー)」。2002年にはアニメーション映画として『地球光』『月光蝶』の2本にまとめられ、劇場公開された。2007年にはDVDメモリアルボックスI、IIが発売された。放映時の平均視聴率は3.0%だった。
 
物語
正暦2343年、月の民(ムーンレィス)ロラン・セアックはムーンレィスの地球環境適応のモニターとして地球の北アメリア大陸に降下した。地球の自然が珍しく川で遊んでいたところ溺れてしまい、下流にいたキエルとソシエのハイム家の姉妹に助けられた。姉妹は新興富裕階級に属し、長女のキエルはロランが憧れる月の女王ディアナ・ソレルにそっくりだった。ロランは姉妹の推薦でハイム家に雇われ、自家用車の運転手に起用されるなど重用され、(偽装)地球人として穏やかな日々を重ねた。任務をまっとうした後は地球に帰化する気持ちを固めていた。
2年後、ロランとソシエは夏至の夜、マウンテンサイクルにおける成人の儀式にいっしょに参加した。時をおなじくして地球と月の2年間にわたる秘密交渉が決裂し、月の女王の軍(ディアナ・カウンター)が「地球帰還作戦」を開始した。
圧倒的な科学力をもち、巨大モビルスーツで威圧するディアナ・カウンターに対し、アメリア市民軍(イングレッサ・ミリシャ)は複葉機や高射砲などの旧式装備で防衛戦をはじめた。これに苛立ったディアナ・カウンターのポゥ少尉は、発砲を禁じられていたにもかかわらず強力な対艦ビーム砲を発射し、相手を蹴散らした。だが、このビーム砲はマウンテン・サイクルに到達し、封印されていた“黒歴史”の遺物「∀ガンダム」を目覚めさせることになった。
ロランはなりゆきで∀ガンダムのパイロットとなり、地球と月の争いを調停するために活動する。それは月の女王ディアナの願いでもあった。
 
作品解説
本作品は、『機動戦士ガンダム』誕生20周年記念作品として製作されたTVアニメシリーズである。20周年という節目を記念して『機動戦士Vガンダム』以来5年ぶりにガンダムシリーズの生みの親である富野由悠季が総監督を務めた。フジテレビ系列で放送された唯一のTVアニメ作品でもある。
「∀」という記号は、集合論や論理学にて用いられる全称記号であり、「全ての~」を意味する。また、「A(最初)に戻る」という意味からターンエーと読むこととした。つまり『∀ガンダム』には、『機動戦士ガンダム』を始めとした「宇宙世紀シリーズ」の歴史だけでなく、それぞれ独立した世界観を持つ「未来世紀」や「アフターコロニー」、「アフターウォー」、「コズミック・イラ」といった富野が制作に携わっていない作品群の歴史をも全て包括して「黒歴史」と呼称することで、全ての『ガンダムシリーズ』そのものを総括したいという思いが込められている。それゆえ、「地球に住む人類と、宇宙に進出したコロニーや月に住む人類との幾多にも及ぶ戦争は、どういう結末を迎えたのか?」といった部分も作中で語られ、全てのガンダム作品が最終的に行き着く完結編とも取れる作品内容となっている。
それまで富野は、自身が参加せずとも多様化し継続していく『ガンダムシリーズ』にあまり好ましい印象を持っておらず、そのために「機動戦士」という冠詞は「宇宙世紀シリーズ」以外には使用を許可していなかった。だが本作品を制作したことで、多様化していく『ガンダムシリーズ』を許容できるようになり、本作品以後は「宇宙世紀シリーズ」でなくとも「機動戦士」という冠詞の使用を許可するようになった。
企画の時点でのタイトルは、『リング・オブ・ガンダム』であった。これは富野由悠季総監督の、「『リング・オブ・イデオン』は無理だから、『リング・オブ・ガンダム』という名称でイデオンみたいな輪廻の物語をやりたい」という趣旨による。『リング・オブ・ガンダム』というタイトルは後に30周年記念ショートフィルムとして公開された作品に用いられた。
本作品も、従来のガンダムと同じく、地球とその周辺の宇宙空間における人類・戦争・政治・歴史といった背景を背負いながら生きていく少年少女たちを通して、人の在り様を描写していく。また、歴代作品へのオマージュもふんだんに盛り込まれている。
それまでのガンダム作品とは異なり、悲惨な戦場の描写は少なく、政治的な駆け引きのシーンが多い。また19世紀のヨーロッパ文明(産業技術は20世紀初頭のアメリカ合衆国)をモデルにした舞台を設定しており、牧歌的で穏やかな情景描写が多い。また、物語には『竹取物語』『とりかへばや物語』『猿の惑星(第1作目)』をベースにしている部分がある。これについて富野は「SFでありがちな『恣意的につくっていく社会構造』をルーズにすることができて、作品的に成功している」「人の動きが狭いところには落ちていなくて、いつもゆったりと風が吹いているようなところがある」と語る。
テレビシリーズとして放映されたガンダムのうちで唯一(2012年現在)冠語(「機動戦士」のような)がついていない作品である。主役機の乗り換えがないことは、ファーストガンダム以降のテレビシリーズとしては唯一である。
月の女王ディアナ・ソレルが物語において重要な位置を占めている。他にも個性的な女性キャラクターが多数登場し、音楽は菅野よう子が担当するなど、「ガンダムシリーズではとくに女性的な作品」と言われることがある。
メカデザイン担当のシド・ミードは世界的なデザイナーであるが、日本のアニメロボットをデザインした経験は乏しく、自分の描いたカイゼル髭のガンダムが日本で受け入れられるか悩んでいた。そこで友人のデザイナーの村上克司に相談した。村上は「大丈夫、まったく問題ない。俺にもこういうのがある」と自分の作品集をミードに送った。そこには頬から巨大なトゲをはやした『ゴッドシグマ』が載っていた。これに勇気づけられてミードは主役メカ、∀ガンダムのデザインを決定した。
∀ガンダムのデザインを見たバンダイの川口克己ははじめ違和感を覚えたものの、「Gガンの経験」(『機動武闘伝Gガンダム』はホビーショーで「ガンダムじゃない」と激しく批判されたが、夏頃には称賛されるようになった)から「ありかな」と考えた。さらに『新世紀エヴァンゲリオン』のヒット以来、バンダイ側はアニメ制作に干渉しなくなっており、∀ガンダムのデザインはバンダイ側からは特に反対されなかった(川口によるとこれは『ブレンパワード』や『ガサラキ』も同様だったという)。
放送当時、プラモデルはあまり売れず、バンダイの関連商品売り上げは176億円と商業的人気は大きなものとはならなかった。これについて富野総監督ら製作スタッフたちは、「普通の人(=いわゆるオタクではない人)を相手にしているから」と語っている。ガンダムファンの間では、キャラデザインやメカニックデザインの特徴、なにより今までのシリーズとは一線を画した内容から好き嫌いの反応がはっきり分かれている。
最終話「黄金の秋」は、メイン放送局であるフジテレビでは予定通り前話の翌週である2000年3月31日に放送されるはずだったが、同日の放送直前に有珠山が突如噴火したため緊急に報道番組が組まれ、全50話中最終話のみ放送が中止された。その翌週も同内容の報道が行われ、結局予定日より2週間後の4月14日に放送された。
自分の作品を褒めることの少ない富野ではあるが、本作品は褒めることが多い。なお、「月刊ニュータイプ」誌上で富野総監督は、2005年に公開された劇場版『機動戦士Ζガンダム』と同じく、20年後に新訳の『∀ガンダム』を創りたいと述べた。そして、朴璐美(ロラン)と高橋理恵子(キエル/ディアナ)も、その時には同じ役で出たいとコメントしていた。
ガンダムシリーズ最後の非デジタル製作によるVTR映像のTVシリーズでもある。また、同シリーズで初めてDVD版が発売された作品でもあり、シリーズ最後のLD作品でもある。
 
スタッフ概要
総監督にガンダムの生みの親である富野由悠季が就き、メカニックデザインに映画『ブレードランナー』『スタートレック』のシド・ミード、キャラクター原案にゲーム『ストリートファイター』などを手がけたカプコン(当時)の安田朗が参加した。音楽は、同監督の前作である『ブレンパワード』から引き続き菅野よう子が担当した。
ミードは、人体の可動性と機械の合理性をもとにしたデザインでガンダムシリーズのメカニックデザインに新風を吹き込んだ。主役機・∀ガンダムは従来のガンダムタイプとは大きく異なる外観を持つ。
富野総監督は書籍のインタビューなどで「僕がガンダムのメカ・ファンだったら『∀』は承認しない。そんなことはわかっている」「(当時)あれ以上のものを手に入れる事ができなかった」といった発言をしている。主役機である∀ガンダムは、劇中にて「不細工である」と容姿について指摘されるシーンもあった。
ただ、∀ガンダムはバンダイから発売されているガンプラシリーズのマスターグレードで、記念すべき100体目に選ばれている。
なお、ガンダムシリーズで唯一、外国人デザイナーがメカニックデザインを務め、女性の声優が男性の主人公を演じた作品でもある。そして、ガンダムシリーズとしては珍しく、OP中にタイトルコールが流れた作品でもある。
 
登場人物
ロラン・セアック:朴璐美
キエル・ハイム/ディアナ・ソレル:高橋理恵子
ソシエ・ハイム:村田秋乃
グエン・サード・ラインフォード:青羽剛
ハリー・オード:稲田徹
キース・レジェ:福山潤
フラン・ドール:渡辺久美子
シド・ムンザ:野島昭生
リリ・ボルジャーノ:小林愛
ギャバン・グーニー:大塚芳忠
フィル・アッカマン:小山剛志
ヤーニ・オビュス:桐本琢也
ミハエル・ゲルン:金尾哲夫
ポゥ・エイジ:中西裕美子
ジョゼフ・ヨット:佐藤せつじ
ミラン・レックス:曽我部和恭
アジ大佐:仲野裕
コレン・ナンダー:川津泰彦
ブルーノ:田中一成
サム/ヤコップ:宇垣秀成
ジェシカ:秋元千賀子
ハイム夫妻(ディラン・ハイム:長克巳、ハイム夫人:北條文栄)
メシェー・クン:鬼頭典子
ラダラム・クン:沢木郁也
ホレス・ニーベン:掛川裕彦
キャンサー・カフカ:高乃麗
ムロン・ムロン:立木文彦
ギム・ギンガナム:子安武人
メリーベル・ガジット:夏樹リオ
マリガン中佐/アグリッパ・メンテナー:石丸博也
スエッソン・ステロ:ウガンダ・トラ
テテス・ハレ/リンダ・ハレ:冬馬由美
 
登場用語
マウンテン・サイクル
ナノマシンによって形成された特殊な土壌におおわれた山。その土壌のおかげで、黒歴史時代のさまざまな機器が経年変化から守られていた。研究者のシド・ムンザはこれを「生きている遺跡」と呼んだ。鉱山師によりいくつか謎の遺物が発掘されていたが、ホワイトドール起動により、高度な兵器が埋まっていることがわかり、各地で発掘がさかんになる。
最初に発見されたマウンテン・サイクルはビシニティ鉱山で、∀ガンダム(ホワイトドール)がなかばむき出しの状態で眠っていた。∀ガンダム専用の武器格納庫らしい物もあった。
マウンテン・サイクルのうちでも鉱山師によってとくに不吉とされていたのが「ロスト・マウンテン」である。放射性廃棄物のゴミ捨て場と考えられる。
月にもマウンテン・サイクルと似たような場所があるが、人工的に埋められている。
地球降下作戦
正歴2345年、月の民(ムーンレィス)が地球に帰還すべく最初に行った作戦。放射能に侵されていた地球が住める状態に回復したことがわかり(福井晴敏の小説版では、ムーンレィスが放射能除去のためにナノマシンを投下するなどしている)、およそ300年前から帰還の気運が高まっていた。正暦2343年、身体テストを兼ねて数人の先発隊を地球に潜入させた。同時期にアメリア大陸のイングレッサ地方の支配層と交渉を始めたが、決裂し実力帰還を決行した。地球人に対する殺傷行為は禁じられていたが、結果的にイングレッサ・ミリシャ(地球人)との間で戦争状態となった。
冬の城
メンテナー家によって管理されている複数の巨大な黒の球体。ムーンレィスの為に設置された人工冬眠装置で、一千万人を一度に眠らせる事が可能。内部には黒歴史に関するデータベースが存在する。
 
スタッフ
シリーズスタッフ
企画:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
総監督: 富野由悠季
キャラクター原案:安田朗
キャラクター設定:菱沼義仁
メカニックデザイン:大河原邦男、シド・ミード、重田敦司、沙倉拓実
メカニカルデザイン協力:岩城人志、宮尾佳和、石垣純哉、前田真宏、土器手司、宮武一貴、高倉武史、山根公利
美術監督:池田繁美
色彩設計:笠森美代子
撮影監督:大神洋一
編集:山森重之、秋保宣宏、ジェイ・フィルム
音響監督:鶴岡陽太
音楽:菅野よう子
制作協力:ASATSU-DK、創通エージェンシー
プロデューサー:鈴木吉弘(フジテレビ)、富岡秀行(サンライズ)
制作:フジテレビ、サンライズ
 
主題歌
オープニング
※2曲共に冒頭部分では過去のガンダムシリーズの映像を流した破片状のものが流れている。
『ターンAターン』
作詞 - 井荻麟 / 作曲 - 小林亜星 / 編曲 - 矢田部正 / 唄 - 西城秀樹 (キングレコード)
(2話 - 38話)
ガンダムシリーズのオープニング主題歌の中で、放送期間が2クールを超えたものは2011年現在この曲が最後である。また、機動戦士ガンダムΖΖ以来、約12年ぶりに歌詞字幕が流れていない。第16話のみ最初の部分だけが流れたバージョンが放送されたことがある。
西城秀樹の起用は小林亜星の指名による。小林が本作を作成している時にふたりは「寺内貫太郎一家」の舞台で共演しており、また西城はちょうどBMG JAPANからポリドール・レコードへの移籍の狭間で契約が切れている期間だったため、キングレコードから発売することができた。また、西城はレコーディングにあたり、かつて『機動戦士Ζガンダム』の主題歌を歌っていた森口博子に問い合わせを行っている。
「寺内貫太郎一家」舞台公演のスケジュールとの兼ね合いで、番組オンエアの2週間前に音源があがるという強行スケジュールだったが、富野総監督は詞をもとに大まかなあたりをつけ、先にOP映像の絵コンテを完成させるという荒技を行った(通常は音源にタイミングを合わせ構成を立てる)。
富野総監督は「ターンAターン」を非常に気に入っていたが、売り上げが良くなかったため後期OPを作ることとなった。ただしカラオケでは結構歌われている。
『CENTURY COLOR』
作詞 - 井荻麟、浜口祐夢 / 作曲 - 浜口祐夢 / 編曲 - RAY-GUNS / 唄 - RAY-GUNS
(39話 - 50話)
 
エンディング
『AURA』
作詞・作曲 - 谷村新司 / 編曲 - 菅野よう子 / 唄 - 谷村新司 (ポニーキャニオン)
(1話 - 15話、17話 - 40話)
放送当時のアニメ雑誌で、『AURAとは、古代ギリシャ語で「夜明けに吹く一番最初の風」という意味である』と書かれていた。
『月の繭』
作詞 - 井荻麟 / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 唄 - 奥井亜紀
(41話 - 49話)
『限りなき旅路』
作詞 - C.Piece / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 唄 - 奥井亜紀
(最終話)
 
挿入歌
『羽化』
作詞 - 岩里祐穂 / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 大塚宗一郎
『ALFA and OMEGA』
作詞 - Carla Vallet / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - Carla Vallet
『月下美人』
作詞 - 井荻麟 / 作曲 - 小林亜星 / 編曲 - 矢田部正 / 歌 - 西城秀樹
『Until』
作詞 - Chris Mosdell / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - Maryanne Murray
『The song of a stone』
作詞 - Chris Mosdell / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - 大塚宗一郎
 
劇中歌
『月の魂(たま)』
作詞 - 井荻麟 / 作曲 - 菅野よう子 / 編曲 - 菅野よう子 / 歌 - レット隊
 


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